口腔は細菌の温床
口腔内には様々な菌が定着します。 加齢による免疫能の低下に伴い日和見菌が増加します。
その種類は350~700種にのぼると言われています。
これらの菌のうち、病原性のあるものは、大きく3つのグループに分けられます。
日和見菌
日和見菌について
高齢者では、日常生活活動度の低下による不十分な口腔ケアと、
加齢による免疫能の低下などに伴い口腔内日和見菌が増加します。
また歯垢中の口腔内日和見菌の増加とともに、
肺炎桿菌、黄色ブドウ球菌などの全身疾患原因菌も含まれます。
これらの全身疾患病原菌と、高齢者における発症状況のメカニズムは
まだ明らかになっていませんが、これらの菌の増加を防ぎ、
リスクを低下させることが全身の健康維持に関係していると考えられます。
それに加えて、要介護高齢者では、うがいが困難になったり、
ブラッシングがうまくできなくなったりすることがあり、さらにリスクが高くなってきます。
このようなリスクを少しでも減らすために口腔ケアが必要になってきます。
口腔内で見られる日和見感染菌
- ■Candida albicans(カンジダ菌)
- ■Klebsiella pneumoniae(肺炎桿菌)
- ■Pseudomonas sp. (緑膿菌も含む)
- ■Staphylococcus aureus:MRSA(メシチリン耐性); MSSA(メシチリン感受性)(黄色ブドウ球菌)
- ■Serratia marcescens(セラチア菌)
- ■Branhamella catarrhalis(カタル球菌)
- ■Haemophilus influenzae(インフルエンザ菌)
など。 これらの菌は宿主の免疫力低下に伴い、増殖し病原性を発揮することがあります。
このような症状を日和見感染症といいます。
う蝕病原菌
主なう蝕病原菌
- ■Streptococcus mutans(平らな面のう蝕)
- ■Streptococcus sobrinus (平らな面のう蝕)
- ■Streptococcus mitis (根面や溝のう蝕)
- ■Lactobacillus sp.(根面や溝のう蝕)
う蝕病原菌は1.5歳ごろから口腔中に定着し始めます。
歯の平らな面にくっつき、バイオフィルムと呼ばれる細菌の塊を作ってう蝕を作る細菌と、
くっつく能力が弱いために歯の溝や根の表面といったくっつきやすい場合でのみ
う蝕をつくる細菌に大きく分かれます。
加齢と伴に変化するう蝕リスク
高齢者では、歯周病などにより歯肉の退縮がみられることがあります。
そのために露出した根の表面は食べかすが歯顎部同様にたまりやすく、
さらに酸に弱いためにう触になりやすくなりますので、
露出した歯の根には注意が必要になってきます。
また、運動能力の低下により、口の中の食べ物の移送がうまくいかなくなることもあります。
さらに、加齢と伴に口腔内への関心が無くなったり、
痛覚の低下により口腔内が不潔のまま放置されることがあります。
歯周病原因菌
歯周病
病原性細菌が歯周組織に炎症を引き起こし、支えている歯槽骨を破壊する炎症性疾患。
患者の大半が慢性歯周炎として発症します。
主な歯周病原因菌
- ■Porphyromonas gingivalis(慢性歯周炎)
- ■Tannerella forsythia (慢性歯周炎)
- ■Actinobacillis actinomycetemcomitans (侵襲性歯周炎、慢性歯周炎)
- ■Fusobacterium nucleatum (慢性歯周炎)
- ■Campylobacter rectus (慢性歯周炎)
- ■Prevotella intermedia (思春期性歯肉炎、妊娠性歯肉炎、壊死性潰瘍性歯周炎)
- ■Treponema denticola(壊死性潰瘍性歯周炎)
などがあげられる。
高齢者では進行している場合が多い
歯周病の進行は、痛みを伴わないことが多く、
発症の初期段階では自覚症状があまりありません。
進行すると、歯肉の腫れ、出血、噛んだときの歯の揺れや痛みを伴うため、
気が付くようになります。症状の改善には原因となる歯石除去といった
消炎処置が必要となります。